ミュージカル『CHESS』を知るということは、なぜ人々がこの作品に取り憑かれるのかを理解することでもある。狂気と高揚感が同居したこの悪名高い「冷戦ミュージカル」は、ほぼ間違いなく“直しようがない”作品だ。天にも昇るような高揚感と、底知れぬ急降下。その落差は凄まじい。だがそれでも、この奇妙なミュージカルという生き物は、何よりまず――とてつもなく楽しい。
＊『CHESS』カンパニー｜写真：マシュー・マーフィー
ABBAのベニー・アンダーソンとビヨルン・ウルヴァースが音楽を、ティム・ライスが作詞を手がけた1986年の問題作。その轟音のようなリバイバル公演が、今夜、インペリアル・シアターで幕を開ける。今回もまた、数え切れないほど改訂を重ねてきた最新版だ。最新の脚本は、過去の複数バージョンをつぎはぎし、いくつかの新たな手直しを加えたもので、エミー賞受賞俳優から脚本家へと転身したダニー・ストロングによる。
さて、こう思うだろう。
「で、『CHESS』は直ったのか？」。
答えはこうだ。
まったく直っていない。
そしてどうか、どうか、この試行錯誤が終わることのないように。
もし挑戦が止まってしまったら、私たちはどれほど多くの喜びを失うことになるだろう。とりわけ、ベニーとビヨルンによる不朽のスコアの喜びを。胸を打つバラード、シンセサイザーのきらめき、そして爆発的なロック・オペラが渾然一体となった音楽の連なりだ。音楽監督イアン・ワインバーガーのもと、18人編成のオーケストラが鳴らすこのスコアは、アンデルス・エルヤスとブライアン・ユシファーによる編曲も相まって、切れ味鋭く、圧倒的な力を放つ。
ただし、その力強さが時に行き過ぎる場面もあり、懸命に歌うアンサンブルの声を音楽が飲み込んでしまうこともある。エレガントなグレーの衣装に身を包んだダンサーたちは、ローリン・ラターロ（『ザ・フー／トミー』）による目もくらむような振付で、それを補って余りある存在感を見せる。彼らの筋肉質でエネルギッシュなバックアップがあまりに刺激的なだけに、第2幕の多くで背景に退いてしまうのは、ある意味避けられないとはいえ、惜しまれる点だ。
＊『CHESS』カンパニー｜写真：マシュー・マーフィー
演出を手がけたマイケル・メイヤーの舞台は、洗練されスタイリッシュで、ほとんどコンサートそのものと言っていい。ただし、それはあなたが目にするであろう中でも、最も磨き上げられ、最も手の込んだコンサートだ。デヴィッド・ロックウェルの装置はシンプルだが、ケヴィン・アダムスの豊かな色彩の照明と、ピーター・ニグリーニによる控えめな映像がそれを引き立てる。このアプローチに異を唱えるのは難しい。『CHESS』は音楽の作品であり、メイヤーはそれをよく理解している。物語を明確にしようとするこのチームの誠実な努力にもかかわらず、だ。
物語面に関しては、評価は正直言って賛否両論だ。ストロングの脚本は、後付けされた語り部「アービター」に大きく依存している。見事に大仰な演技を見せるブライス・ピンクハムは大奮闘しているが、これまでの『CHESS』同様、この拡張されたキャラクターは問題を解決するのと同時に、新たな問題も生み出している。物語は確かに分かりやすくなったが、その分、不自然な中断が増えてしまった。さらにストロングは、バイデンやRFKをネタにした、いかにも時事的で寒々しいジョークをアービターの台詞に散りばめ、自らの立場を不利にしている。
しかし、アーロン・トヴェイト、リア・ミシェル、そして真に啓示的な存在であるニコラス・クリストファーの力強い歌声がインペリアル・シアターの屋根を揺るがす瞬間、そんなことはほとんど問題ではなくなる。トヴェイトとミケーレは演技面で時折苦戦し、二人の相性も万全とは言い難い。それでもトヴェイトは「かわいそうな子（ピティ・ザ・チャイルド）」を見事に歌い上げ、「ワン・ナイト・イン・バンコク」を官能的に披露する。一方ミケーレは、「ノーバディーズ・サイド」を信じがたいほどの声量で歌い切る。
だが、主役3人の中で最も名の知られていないクリストファーこそが、この公演をさらっていく存在だ。「私の目指す場所（ホエア・アイ・ウォント・トゥ・ビー）」は圧巻で、「アンセム」は完璧無比。さらに彼は、キャラクターの内なる葛藤に重みと痛みを与え、この『CHESS』に一つの驚くべき、そして不可欠な要素をもたらしている。
それは、鼓動する心だ。
ミュージカル『CHESS』は現在、ニューヨークのインペリアル・シアターで上演中。チケットおよび詳細情報は公式サイトを参照のこと。
