レビュー:『マンマ・ミーア!』は、この夏あなたに必要な「笑顔いっぱいのひととき」かもしれない
最新の北米ツアー公演は、観客が何を求めているのかを正確に理解し、それをしっかり届けてくれる――とにかく楽しい時間だ。
作品:『マンマ・ミーア!』
会場:プリンセス・オブ・ウェールズ・シアター(300 King St. W.)(※)
公演期間:現在上演中~8月30日(日)
見どころ:愉快で心優しく、才能あふれるダイナモスを演じるカーリー・サコロヴとジャリン・スティール
評価:★★★★(5点満点中4点)
観るべき理由:出演者たち自身が一瞬一瞬を心から楽しんでいることが伝わってくる、エネルギッシュでキャンピーな舞台だから。
あなたは踊り、飛び跳ねることになるだろう。人生最高の時間とまではいかなくても、少なくとも、とびきり楽しい時間を『マンマ・ミーア!』で過ごすことになる。
ミルヴィッシュが提供するこの北米25周年記念ツアーは、心温まる物語とグルーヴ感あふれるミュージカル・ナンバーを、5度目となるトロントの舞台へと連れ戻した。
もちろん、この公演にも『マンマ・ミーア!』のあらゆるプロダクションが抱えるのと同じ問題がある。つまり、2時間半の中にできるだけ多くのABBAの曲を詰め込むために作られた、やや薄っぺらなストーリーという点だ。
それでも、この「ウェディング・プランナーにとっては悪夢、ディスコ好きにとっては夢」のような作品は、夏の終わりを盛大に締めくくるために、今あなたが必要としているものなのかもしれない。
脚本はキャサリン・ジョンソン、音楽・歌詞はABBAのベニー・アンダーソンとビヨルン・ウルヴァース。
『マンマ・ミーア!』が世界で最も長く上演されているジュークボックス・ミュージカルの一つであるのには、十分な理由がある。
雰囲気は最高で、音楽は危険なほど耳に残り、ストーリーはシンプルだ。
青く輝く地中海のどこかにある、太陽が降り注ぐギリシャの島。わずか1日後、ソフィ・シェリダン(ジュリエット・M・オヘダ)は結婚式を迎える。
母親のドナ(ジェシカ・クラウチ)は、その大切な一日をソフィがずっと夢見てきた通りのものにするため、懸命に準備してきた。そして、その日はもう目前に迫っている。
ただ一つ足りないものがある。
花嫁の父親だ。
そして問題は、母親のかつての恋人3人のうち、誰が自分の父親なのかをソフィ自身が知らないことだった。
父親に自分と一緒にバージンロードを歩いてもらいたいと決意したソフィは、なんと3人全員を結婚式に招待する。
さらに驚くべきことに、3人とも本当にやって来てしまう。
結婚式の時間が刻一刻と近づくなか、自分の父親が誰なのかを突き止めようとするソフィの行動は島中に波紋を広げ、新たな恋、長い間心の奥に埋もれていた痛み、そしてスカンジナビアが生んだ象徴的なポップ・ヒットの数々をよみがえらせていく。
ジュリエット・M・オヘダのソフィ
注目すべき若手女優であるジュリエット・M・オヘダの驚くほど澄み切った歌声によって、数々の楽曲が見事に披露される。
彼女が演じるソフィは夢見るような瞳を持ち、誠実でありながら少し自己中心的。考えなしに行動することもありながら、一方では思慮深い。
つまり、自分が何を望んでいるのか、自分は何者なのかを模索している20歳の女性を、実に的確に表現している。
ジェシカ・クラウチのドナ
ジェシカ・クラウチも同じように心に響く演技を見せる。
すべての母親も、かつては一人の少女だった。
クラウチは、かつて反抗的で意志の強い若い女性だったドナが、今では日々に追われる大人となり、それでも少しずつかつての自分自身と再びつながっていく姿を、さまざまな側面から見事に表現している。
ドナの親友であり、かつてのバンド仲間でもあるロージー(カーリー・サコロヴ)とターニャ(ジャリン・スティール)は、励まし、ユーモア、そして思いやりによって、ドナの変化を後押しする。
二人の人物には、まるで本当に長い人生を歩んできたようなリアリティーがある。ドナと二人が長年にわたり築いてきた友情、そしてロージーとターニャ自身の友情も、ごく自然に想像することができる。
サコロヴとスティールはともに力強い歌声を披露すると同時に、笑いと温かさに満ちた演技を見せる。それらが一度に炸裂する場面さえある。
「チキチータ」では、不器用ながらも愛情たっぷりにドナを慰め、「ダンシング・クイーン」では、羽根飾りのボアとヘアドライヤーを手に彼女を元気づける。
サコロヴが全身全霊で繰り広げる身体を使ったコメディーには、笑わずにはいられない。
そしてスティールによる「ダズ・ユア・マザー・ノウ」は、間違いなくこの舞台で最も楽しいナンバーの一つだ。
それには、ターニャに夢中になっているペッパー役のドミニク・ヤングも大きく貢献している。
彼はターニャの気を引こうと、猛烈にアプローチし、これ見よがしに自分をアピールし、勢いよくジャンプして開脚する。その姿はまるで、求愛相手を惹きつけようとする鳥のようだ。
ソフィの友人たちとスカイ
ソフィの二人の友人、リサ(レナ・オーウェンズ)とアリ(マディ・ガーバティ)も、観客に伝染するほどのエネルギーを放っている。
親友のギリシャの島での結婚式に、二人はまさに期待通り、心の底から興奮し、大喜びしている。
そして、グラント・レイノルズ演じる花婿になる予定のスカイや他のアンサンブル・メンバーとともに、このミュージカルの大げさではあるものの深刻すぎないメロドラマと、おバカで楽しい世界へ、恥ずかしがることなく全身で飛び込んでいく。
3人の「父親候補」
そして、この大騒動の原因となるのが、ソフィの父親かもしれない3人の男性だ。
ロブ・マーネル演じる、生真面目で堅苦しいものの徐々に心を開いていくハリー・ブライトと、リーランド・バーネット演じる、まるでインディ・ジョーンズのような冒険家タイプのビル・オースティンは、どちらも愛すべき人物だ。
ヴィクター・ウォレス演じるサム・カーマイケルには魅力があり、その歌声も力強い。
ギリシャの島を表現する舞台美術
マーク・トンプソンがデザインした舞台セットは、観客を本当にギリシャの楽園へ連れて行ってくれるほどではない。
それでも、「ここはギリシャの島だ」と観客がその世界観を受け入れることにすれば、十分に機能している。
壁には何層にもわたって使い込まれたような白い塗装が施され、キクラデス諸島風の建築様式を表現している。
そして、ドナのタベルナに置かれた、今にもグラグラしそうな家具を見ると、彼女がお金を必要としていることを思い出させる。
まさに「マネー、マネー、マネー」だ。
島を生き生きと見せる照明
ハワード・ハリソンが手掛ける照明は、空を再現することによって、しばしば島に生命を吹き込む。
夕暮れの「ゴールデンアワー」には、温かなオレンジ色の光がステージを優しく包む。
ソフィのバチェロレッテ・パーティーでは、月明かりに照らされたような幻想的な雰囲気を作り出す。
そして出演者たちがビーチで過ごす場面では、強い太陽が降り注いでいるような光を浴びせる。
一方で、照明が物語を必要以上に説明しようとする、あまりに直接的な演出になると、それほど成功しているとは言えない。
たとえば、ドナがショックを受けたことを強調するため、ステージ全体を突然、刺激的なほど真っ赤な光で染める場面などがそうだ。
長年愛されてきた『マンマ・ミーア!』らしさ
フィリダ・ロイドの演出は、このミュージカルがこれほど長く愛されてきた理由である、確実に観客を楽しませる生き生きとした鼓動をしっかりと守っている。
アンソニー・ヴァン・ラーストによるエネルギッシュな振り付けには、2008年の映画版へのオマージュも盛り込まれているが、古臭く感じることはない。
ファンなら、おなじみの演出を楽しめるだろう。
もちろん、知っている人にはおなじみの、足ひれをつけて踊るダンス・シーンも登場する。
最大の弱点は、やはりストーリー
この公演の最大の弱点は、このプロダクションだけに特有の問題ではない。
物語そのものが、劇中に登場するタベルナと少し似ている。
今にもバラバラになりそうで、どうにか形を保っているのだ。
たとえば「ザ・ウィナー」のような一部の曲は、ストーリーに無理やり押し込まれているように感じられ、歌詞を本当に注意深く聞けば、物語の流れの中であまり意味を成していないことにも気づく。
結局のところ、この物語は主として、スウェーデンが生んだABBAのヒット曲を楽しむための「乗り物」なのだ。
ABBA、「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」!
しかし、最初からそれ以上のものを期待していなければ、決してがっかりすることはないだろう。
※プリンセス・オブ・ウェールズ・シアターとは
プリンセス・オブ・ウェールズ・シアター(Princess of Wales Theatre)は、カナダ・オンタリオ州トロントの中心部にある大型劇場です。住所は300 King Street Westで、劇場やレストランなどが集まるトロントのエンターテインメント地区に位置しています。
1993年に開場した比較的新しい劇場で、約2,000席を備えています。名称は、当時のダイアナ皇太子妃(Princess of Wales)の許可を得て付けられました。トロントを代表する劇場運営会社ミルヴィッシュ・プロダクションズ(Mirvish Productions)が運営する主要劇場の一つです。
特に、ブロードウェイやウエストエンド系の大規模ミュージカルを上演できる劇場として知られています。これまで『ライオン・キング』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』をはじめ、多くの大型作品やツアー公演の舞台となってきました。
今回の記事で紹介されているのは、ここで上演されている『マンマ・ミーア!』北米25周年記念ツアーです。ジュリエット・M・オヘダがソフィ、ジェシカ・クラウチがドナ、カーリー・サコロヴがロージー、ジャリン・スティールがターニャを演じています。
客席はステージを見やすいように設計され、大規模なセットや照明、ダンスを伴うミュージカルにも対応しています。そのため、ABBAの楽曲を次々と繰り出す『マンマ・ミーア!』のような、華やかでエネルギッシュな大型ミュージカルとの相性が非常によい劇場です。
簡単にいえば、プリンセス・オブ・ウェールズ・シアターは「トロントを代表するミュージカル劇場の一つ」と考えると分かりやすいでしょう。ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドの劇場に近い役割を、トロントで担っている劇場です。
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