ABBAと雨、そして「ダンシング・クイーン」たちでいっぱいの会場
*ビヨルン・アゲインは「ザ・ABBA・フォーエバー・ツアー」をフィリピンで開催し、ザ・シアター・アット・ソレア(※)を「ダンシング・クイーン」で踊る巨大なダンスフロアへと変貌させた。
写真提供:ビヨルン・アゲイン
どんなコンサートにも、それぞれ独自の個性がある。しかし、ABBAの観客には、ほかとは違う特別なエネルギーがある。
洗練され、自信に満ち、そして何より、周囲のことなど気にせず心から楽しんでいる――そんな雰囲気だ。
会場の外では、ハバガット(フィリピンの南西モンスーン)が本領を発揮していた。激しい雨、どんよりとした空、そして誰もが外出をためらうほどの大量の雨。
しかし、コンサート会場の中では、まるでまったく別の気象現象が起きていた。
そこにはスパンコールが輝き、笑い声があふれ、聞き慣れたメロディーが流れ、観客全員が、まるで外の雨など存在しないかのように踊っていた。
メルボルンを拠点とするABBAトリビュート・バンド、ビヨルン・アゲイン(Björn Again)は、この8月、「ザ・ABBA・フォーエバー・ツアー」をフィリピンで開催。8月7日にセブ、8月8日と9日にマニラで公演を行なった。
約2時間にわたり、彼らは会場をABBAの時代を超えて愛される音楽を祝う、きらびやかな空間へと変貌させた。
披露されたのは、
「マンマ・ミーア」
「ダンシング・クイーン」
「恋のウォータールー」
「SOS」
「ギミー!ギミー!ギミー!」
といった人気曲。
さらに、
「ザ・ウィナー」
「チキチータ」
「悲しきフェルナンド」
「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」
といったバラードも演奏された。
しかし、この夜の本当の主役は、もしかすると観客だったのかもしれない。
母親たち、おばあちゃんたち、おばさんたち、そしてABBAとともに青春時代を過ごしてきたすべての人々にとって、これは単なるコンサートではなかった。
彼女たち自身が輝くための時間だった。
さまざまなジャンルのコンサートを取材してきたジャーナリストとして、観客がただ純粋に楽しんでいる姿を眺めることには、どこか心を癒やしてくれるものがある。
どんなコンサートにも、それぞれ独自の個性がある。
しかし、ABBAの観客には、ほかとは違うエネルギーがある。
洗練され、自信に満ち、そして周囲を気にすることなく、心から楽しんでいる。
そこにいたのは、ABBAの曲をすっかり暗記している人たちだった。
「ダンシング・クイーン」を一緒に歌う姿。
リズムに合わせて体を動かす姿。
友人たちと笑い合う姿。
そして、絶対に忘れたくないと思っていることが伝わってくる瞬間を、スマートフォンで撮影する姿。
パートナーと一緒に来た人もいれば、友人や家族と訪れた人もいた。
ただ単純に、ABBAの音楽が大好きだからという理由でやって来た人もいた。
そして、おそらくそれこそが、この夜をこれほど特別なものにしたのだろう。
外ではハバガットによる雨が降り続いていた。
しかし会場の中にあったのは、喜びとノスタルジー、そして自分が本当に好きなものを心ゆくまで楽しめるという、ささやかで贅沢な時間だった。
人生の多くの時間を誰かの世話に費やしてきた世代の人々が、ようやく完全に自分自身のためだけの夜を楽しんでいる――。
その姿を見ることには、胸を打つものがある。
お母さんが踊る。
おばあちゃんが歌う。
おばさんが大好きなABBAの曲に合わせて歓声を上げる。
なぜそんなに楽しんでいるのか、誰にも説明する必要はない。
ただ、楽しいのだ。
ABBAの音楽には昔から、世代を超えることのできる稀有な力がある。
数十年前に発表された楽曲が、今なお新しいリスナーを獲得し続けている。
家族で聴くプレイリスト、映画、カラオケ、結婚式、そしてストリーミング・サービス――ABBAの音楽と出会う場所はいくらでもある。
若いコンサート客にとって、それらは両親から受け継いだ「名曲」なのかもしれない。
一方、年配のファンにとっては、自分の人生のある時代すべてを彩ったサウンドトラックのように感じられることもあるだろう。
それこそが、ライブ・ミュージックの魔法だ。
過去を、もう一度「現在」にしてくれる。
そして、おそらくABBA自身が「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」の中で、それを最もよく表現している。
「音楽をありがとう、私が歌っているこの歌をありがとう」。
なぜなら、音楽は時として、私たちを楽しませるだけのものではないからだ。
音楽は、何度でも戻ることのできる思い出を与えてくれる。
思い出したい人を心によみがえらせてくれる。
そして、なぜ私たちが今も一緒に歌い続けるのかを思い出させてくれる瞬間を与えてくれる。
ジャーナリストという立場から、その光景が目の前で繰り広げられていくのを見ると、コンサートとは必ずしも豪華な演出やスペクタクルだけを意味するものではないのだと改めて気づかされる。
時には、人々が自分でも忘れかけていた「かつての自分」と再び出会う瞬間を目撃する場所でもあるのだ。
ビヨン・アゲインの観客は、まさにその証明だった。
彼らは思い思いに着飾り、歌い、踊っていた。
そして数時間だけ、外の天気などまったく問題ではなくなった。
ハバガットがマニラの空を覆っていたとしても、会場の中だけは、ずっと太陽が輝いていた。
そして、その夜だけは――
お母さんも、おばあちゃんも、おばさんも、ただショーを観ている観客ではなかった。
彼女たち自身が、「ダンシング・クイーン」だったのだ。
※ザ・シアター・アット・ソレア(The Theatre at Solaire)は、フィリピン・マニラ首都圏のパラニャーケ市にある大型統合型リゾート「ソレア・リゾート・エンターテインメント・シティ」内の本格的な劇場です。所在地はエンターテインメント・シティ地区の 1 Asean Avenue です


最大の特徴は、1,740席を備えた大型のリリック・シアターであること。高水準の音響・映像設備と舞台照明システムを備え、ミュージカル、演劇、ダンス、コンサートなど幅広い公演に対応しています。
写真を見ると、1階席に加えて大きく広がる上階席を持ち、学校やホテルの一般的なホールとは異なる、本格的なプロセニアム形式の劇場であることが分かります。世界規模のショーやコンサートを開催する、ソレアを代表するエンターテインメント施設です。
今回の記事では、ビヨルン・アゲイン(Björn Again)が「ザ・ABBA・フォーエバー・ツアー」のマニラ公演を行ない、「ダンシング・クイーン」などで観客が踊り、劇場全体が巨大なダンスフロアのようになった、と表現されています。
記事中で説明を加えるなら、
「フィリピン・マニラ首都圏のソレア・リゾート・エンターテインメント・シティ内にある、1,740席を擁する本格的な劇場『ザ・シアター・アット・ソレア』」
とするのが分かりやすいでしょう。
https://tribune.net.ph/2026/08/11/abba-rain-and-a-room-of-dancing-queens



