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劇団四季 マンマ・ミーア! WATERLOO RADIO

【レビュー】『マンマ・ミーア!』がアブダビにスパンコール、郷愁、そして“共同体の力”を届ける

『マンマ・ミーア!』の上演中、観客の間には目に見える変化が起こる――最初は遠慮がちに観ていた人々が、次第に体全体で楽しむようになり、まるで「ダンシング・クイーン」の歌詞を思い出したかのように一体感が生まれていく。その一体感は、長年愛され続けているこのミュージカルが確実に呼び起こすものであり、舞台作品にとって「ヒット作」を超えて「文化的な存在」となったとき、どんな目的が求められるのかという問いを投げかけてくる。

*ステフ・パリーとエリー・キングドンが、アブダビ公演の『マンマ・ミーア!』で母娘のドナ・シェリダンとソフィ・シェリダンを演じています。写真提供:Proactiv Entertainment Middle East。

*上記画像をクリックすると動画に移行します。

1999年にロンドン・ウエストエンドで初演されて以来、ABBAの名曲に彩られたジュークボックス・ミュージカル『マンマ・ミーア!』は、瞬く間に大ヒットを飛ばし、今や多くの人々にとって「共有された記憶」となった。観客の中には開幕前から口ずさむ人さえいるほど、この作品は深く馴染みのあるものとなっている。

現在アブダビのエティハド・アリーナ(※)で上演中のこのバージョンは、国際ツアー公演の一環であり、人気作品を再演するということがどういう意味を持つのかをよく示している。最大の課題は演出ではない。『マンマ・ミーア!』はすでに洗練された商業作品として完成されており、ツアーキャストの動きは正確で、照明のタイミングも完璧、音楽も原曲への敬意を込めて演奏されている。あらゆる面で「成功した公演」だ。

しかし、より興味深い問いは、そうした成功を単に技術的な完成度で測るべきなのか、それとも文化的アイコンとなった今こそ、何か新しい価値を見出す必要があるのかということだ。おなじみの楽曲に合わせて頭を揺らしながら、筆者はふと思った――『マンマ・ミーア!』のような作品は変わるべきなのか?あるいは、誰のために変わるべきなのか? それは必ずしもこの作品が背負うべき課題ではないかもしれない。古典作品が生き残るのには理由がある。ただ、20年以上にわたって上演され続けている今、作品を“生かし続ける”とはどういうことなのか、考えさせられる。

アブダビ公演は、観客が期待するもの――現実逃避、温かさ、きらめき、そしてABBAの楽曲がもたらす懐かしさ――をきちんと届けてくれる。ストーリーは、若き花嫁ソフィが母ドナの元恋人3人を結婚式に招き、実の父親を探ろうとするというもので、あくまでも楽曲が主役の構成だ。

軽妙なセリフ回しや程よい緊張感に支えられた物語の中にも、思いがけない感情の深みが潜んでいる。このバージョンで最もそれが際立っていたのは、ステフ・パリー演じるドナによる「ザ・ウィナー」の場面だ。感情を爆発させるのではなく、内に秘めた切なさを抑制的に表現しており、映画版でメリル・ストリープが演じたドナではあまり感じられなかった“生々しい弱さ”を体現していた。

*キングドン演じるソフィは、自分の父親が誰なのかを探し出す旅の途中にいます。写真提供:Proactiv Entertainment Middle East。

また、ソフィ役のエリー・キングドンは、その率直でまっすぐな演技と透明感のある歌声で、キャラクターに重みと温かさを与えていた。ドナの旧友で元バンド仲間のターニャとロージー(サラ・アーンショウとニッキー・スウィフト)が演じる二人も、コミカルかつリズムのよい演技で舞台に活気を与え、感情面のバランスを取る役割を果たしていた。

これらの演技は斬新というよりは経験に裏打ちされたものだろう。しかし、それがこの作品の本質なのかもしれない。すでによく知られた作品において、“高める”ことは必ずしも“変える”ことではない。

筆者自身は過去にドバイ公演(2021年)も含めて何度かこの作品を観ており、今回の舞台はややテンプレートに忠実すぎる印象も受けた。ステージングは滑らかだが、時に慎重すぎるようにも感じた。例えば「ヴーレ・ヴ―」や「ダズ・ユア・マザー・ノウ」などの賑やかなナンバーも、活気はあるが思いきった“解放感”にはやや欠けていた。

しかし、初めてこの作品を観る観客にとっては、大きな発見であり感動であることに変わりはない。物語の希望、そしてABBAの曲を生演奏で聴く喜び――これらは何度見ても新鮮に感じられるものだ。そう考えれば、この公演はまさに必要な役割を果たしていると言える。すなわち、「古いものを誰かにとっての“新しさ”に変えること」。

筆者が訪れた初日の夜、会場はほぼ満員だった。10年前であれば、このような大型作品がUAEにやってくるのはまれであり、観客もどこか“様子見”といった雰囲気があった。だが近年では、こうした国際的ミュージカルの公演が増え、しかも好意的に受け入れられており、文化的な変化が進んでいることを感じさせる。UAEの首都は今や“ミュージカルを輸入する”だけでなく、“観客を育てている”のかもしれない。

最後のアンコールでは、キャストと観客、そしてこの筆者さえもが「ダンシング・クイーン」や「恋のウォータールー」を共に歌い踊るという、美しい一体感が生まれた。その瞬間――手を掲げ、歌詞を口ずさみながら――『マンマ・ミーア!』がなぜ長年愛され続けているのか、その理由が改めて心に染みた。

この作品の真の力は、見知らぬ者同士を一時的にでも「ひとつのコミュニティ」に変えることができるという点にあるのかもしれない。UAEに本格的な演劇文化が根付き始めているとすれば――その萌芽に立ち会えること自体が、すでにワクワクする体験だ。

『マンマ・ミーア!』アブダビ公演は、6月22日までエティハド・アリーナで上演中。チケットは125ディルハムから。

※アブダビ・ヤス島に位置するエティハド・アリーナ(Etihad Arena)は、多目的に使用される大型屋内アリーナで、中東地域最大級のエンターテインメント施設です。

https://www.msn.com/en-ae/entertainment/other/review-mamma-mia-brings-sequins-nostalgia-and-power-of-community-to-abu-dhabi/ar-AA1GyG2B?cvid=13A45D8DC8C74F12A53FAA2B35136245&ocid=mailsignout


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