キャリアで初めて、Pulp (※)が BBC Radio 2 のスタジオで「ピアノ・ルーム」コンサートに出演した。
彼らと放送局との関係は、アルバム『モア』の裏話としてさりげなく語られてきた。Jarvis Cocker の「サンデー・サービス」の祝祭的な復活や、ヒット曲とレア曲を織り交ぜた Radio 2 コンサートなど、BBC は再結成後の Pulp を継続的に支援してきた。
その関係は今も続いており、ファンにとって間違いなく大きな恩恵となっている。
コッカー率いるこのグループが、ABBA のカバーを披露し、さらに最高のオリジナル曲を組み合わせる──そんな機会が他にあるだろうか?
「サムシング・チェンジド」と「ザ・ヒム・オブ・ザ・ノース」は、このコンサートにふさわしい“必然”の選曲だが、必ずしも確約されていたわけではない。最終候補が何だったのかは推測するしかないが、Tiny Desk コンサートや Johnny Cash のカバーなどを含め、再始動から3年経った今でも Pulp はリスナーを驚かせ続けている。
今回の ABBA カバーもまさにその一例であり、「サムシング・チェンジド」と「ザ・ヒム・オブ・ザ・ノース」に施された控えめなアレンジの変化も同様だ。
3曲と少しのトーク、そして意外なほどリラックスした夏を前にしたこのパフォーマンスは、ファンにとって理想的な内容だ。
ピアノ・ラウンジのルールは Pulp の強みにぴったりとはまり、これ以上ないタイミングでの出演となった。
「ザ・マン・カムズ・アラウンド」は月末にリリース予定で、『モア』への関心も依然として高い。さらに彼らのクラシック曲は今なお揺るぎない存在感を放っている。
その「旧作・新作・変化」の3要素を、タイトな3曲セットにまとめ上げた構成は実に見事だ。
昔からのファン──Jools Holland の番組での「サムシング・チェンジド」を今も聴き続けている人たち──にも、長らく離れていたリスナーにも等しく響くだろう。
「サムシング・チェンジド」は、時が経つほど魅力が増す素晴らしい楽曲であり、より自由で愛らしい感傷がにじみ出る、心を動かす一曲だ。
そこに控えめなブラスやオーケストラのアレンジが重なることで、Pulp がかつて思われていた以上に順応性の高いバンドであることが分かる。
「ザ・ヒム・オブ・ザ・ノース」では、コッカーが今なお自身の表現の限界を押し広げようとしている様子がはっきりと伝わる。無理をしているのではなく、新しい挑戦を探しているのだ。Pulp 特有のスポークンワード的な引き延ばしも健在である。
そして重要なのは、核となるバンドの演奏が優秀なオーケストラに埋もれていない点だ。
ABBA のカバー「ザ・デイ・ビフォア・ユー・ケイム」では、Mark Webber が特に際立っている。彼と Jason Buckle のギターが、フルート主導の再構築アレンジに深みを与え、ヨーロピアン・ポップの隠れた名曲に新たな命を吹き込んでいる。
楽曲に新しい楽器編成で正義を与える──Pulp はそれを見事にやってのけた。
「ザ・マン・カムズ・アラウンド」と同様に、Pulp は有名曲のカバーという“目新しさ”と、どこか皮肉めいたユーモアを同時に成立させている。
誠実な感傷とキッチュなウィンクが共存し、昨年のチャート成功後もなお、アウトサイダー的な個性は失われていない。
コッカーが長年描いてきた Pulp の世界観は、この ABBA の楽曲とも驚くほど相性が良い。
今回の BBC Radio 2「ピアノ・ルーム」での演奏は、
かつての全盛期に彼らが示していたもの、
今提示しているもの、
そして今年後半に提示しようとしているもの、
そのすべてを体現した見事なパフォーマンスだ。
NPR の Tiny Desk コンサート同様、大胆なインストゥルメンタル再構築を楽しみたいリスナーにとって、間違いなく至福の時間となるだろう。
NPR オフィスでの「ディス・イズ・ハードコア」の演奏に魅了された人なら、ここでも同じ満足感を得られるはずだ。
※Pulp とは?




Pulp(パルプ) は、
1980年代初頭にイングランド・シェフィールドで結成された イギリスのロック/ブリットポップ・バンド です。
1990年代の ブリットポップ黄金期(Blur、Oasis などと同時代) を代表する存在で、
知的・皮肉・ユーモア・社会観察を織り交ぜた歌詞と、
ダンス感覚のあるポップロック・サウンドが大きな特徴です。
フロントマン Jarvis Cocker(ジャーヴィス・コッカー) の
独特な語り口・半スポークンボーカル・キザでコミカルなステージングも強烈な個性として知られています。
基本プロフィール
- 結成:1978年頃(本格始動は80年代)
- 出身:シェフィールド(英国)
- ジャンル:ブリットポップ/オルタナティブロック/アートポップ
- 特徴:
- 物語的・映画的な歌詞
- 労働者階級や日常生活のリアルな描写
- 皮肉とロマンの同居
- ラウンジ、ディスコ、オーケストラなど多彩なアレンジ
代表曲(カタカナ表記)
- 「コモン・ピープル(Common People)」
- 「ディスコ2000(Disco 2000)」
- 「サムシング・チェンジド(Something Changed)」
- 「ドゥ・ユー・リメンバー・ザ・ファースト・タイム?」
- 「ディス・イズ・ハードコア(This Is Hardcore)」
特に
「コモン・ピープル」=英国ポップ史に残る国民的アンセム
として非常に有名です。
キャリアの流れ(簡単年表)
① 下積み期(80年代)
なかなか成功せず、長いインディー時代を経験。
② ブレイク(1994–1996)
アルバム『ヒズ・ン・ハーズ』で注目
→ 『ディファレント・クラス』が大ヒット
→ ブリットポップの中心バンドに
③ 円熟期(後期90s)
『ディス・イズ・ハードコア』など実験的・シネマティック路線へ
④ 活動休止 → 再結成
2000年代に一度停止
→ 2010年代以降たびたび再結成
→ 近年は新作『モア』や BBC セッション、ツアーなどで再評価
音楽的な魅力(ひと言で)
Pulp はよく
「庶民の物語を、最高におしゃれに歌うバンド」
と言われます。
派手さより “共感と皮肉”。
ダンスできるのに、どこか切ない。
ロマンチックなのに、笑える。
この 人間くささ+知性 のバランスが最大の魅力です。
ABBAファン視点のポイント(あなた向け補足)
ABBAがお好きなら、
- メロディ重視
- ストリングス/オーケストラ活用
- ドラマチックな構成
- ポップなのに哀愁がある
このあたりが かなり共通点 です。
実際、最近の BBC セッションでは
ABBA「ザ・デイ・ビフォア・ユー・ケイム」 をカバーしており、
「物語性の強いポップ」という意味で相性抜群でした。



