アリソン・ノートンが観た、ウルヴァーハンプトン・グランド・シアター(※)の『マンマ・ミーア!』
*『マンマ・ミーア!』の出演者たち|写真 © ブリンクホフ・メーゲンブルク
観れば元気になれるジュークボックス・ミュージカルの決定版、『マンマ・ミーア!』が今週、ウルヴァーハンプトン・グランド・シアターの観客を楽しませている。ギリシャの島での暮らしの魅力と、1970年代を代表するスーパーグループ、ABBAの忘れがたい音楽が一つになった舞台だ。
舞台でも映画でも、『マンマ・ミーア!』は1999年の初演以来、熱狂的なファンを獲得してきた。きっと、観ているだけで心から楽しくなるからだろう。
今回のイギリスツアーも、その期待にしっかり応えてくれる。
物語は心温まるうえにおかしくて、ちょっとむちゃなところもある。でも、そんなことは気にならない。結婚を控えたソフィは、自分の父親が誰なのか分からない。そこで母のかつての恋人3人を結婚式に招き、式までに本当の父親を突き止めようとする。さて、母のドナはどう反応するのだろう?
ABBAには数え切れないほどのヒット曲があり、この舞台でも次から次へと名曲が飛び出す。「ハニー、ハニー」や「SOS」といった初期の名曲から、「ノウイング・ミー、ノウイング・ユー」「テイク・ア・チャンス」「スリッピング・スルー」、そして観客を引き込む「ヴーレ・ヴー」に、「ダンシング・クイーン」「恋のウォータールー」。もちろん、タイトル曲の「マンマ・ミーア」もある。
フィリダ・ロイドの演出は切れ味がいい。作品にちりばめられた笑いを巧みに引き出しながら、母と娘の間に流れる繊細な愛情も丁寧にすくい取っている。
*舞台に活気と楽しさを添える出演者たち|写真 © ブリンクホフ・メーゲンブルク
アンソニー・ヴァン・ラーストの振付はエネルギーにあふれ、どこか奔放だ。振りを踊っているというより、登場人物が音楽に乗って自然に体を動かし始めたように見える。
舞台美術はシンプルながら効果的だ。深い青の海を背景に白壁の建物が並び、私たちはたちまち暖かなギリシャの島へと運ばれた。冷え込む11月の夜には、なんともうれしい。照明も雰囲気づくりに一役買っている。昼の場面では陽射しまで肌に感じられそうで、夜のパーティーになると、暗がりの中でディスコの熱気が一気に高まる。
衣装は鮮やかな色づかいで、サテンやスパンコールなど、素材の質感も豊かだ。ボヘミアン風の装いを取り入れながら、当時らしさも残している。
ABBA独特のサウンドを再現するのは容易ではない。誰もが一緒に歌いたくなる曲ばかりだが、その多くは、個性のはっきりした二人の女性の歌声を念頭に書かれている。実際に歌いこなすとなると、難しさがある。それでも、カールトン・エドワーズの音楽監督のもと、『マンマ・ミーア!』のバンドは見事な演奏を聴かせた。ところどころ音量が少し大きすぎるようにも感じたが、音の聞こえ方は会場によって違うだろう。
*心ゆくまで楽しめるひと夜|写真 © ブリンクホフ・メーゲンブルク
食堂の切り盛りに追われる花嫁の母、ドナを演じたアシュリー・ジョーンズは、圧倒的な存在感を放った。
ABBAの大ヒット・バラード「ザ・ウィナー」は、『マンマ・ミーア!』の中でも観客が待ちわびる一曲だ。ジョーンズはその期待に応えた。胸を締めつけ、聴く者に考えさせるこの曲を、見事な歌唱と、人生を重ねた女性ならではの感情の深みで届けてくれた。実に的を射た配役だった。
ターニャ役のサラ・アーンショーは堂々としていて、コメディーの腕も抜群だ。華やかで洗練された佇まいの中に、遊び心もしっかりある。アシュトン・シャープが好演する生意気な若者ペッパーと繰り広げる「ダズ・ユア・マザー・ノウ」も大きな見どころで、客席は笑いに包まれた。
ロージー役のローレン・ウルフは魅力的で、どこかとぼけた味わいがある。ソフィ役のサラ・マクファーレンもぴったりの配役だ。恋をする21歳の初々しさと胸の高鳴りを、素直に伝えてくれる。
*『マンマ・ミーア!』に観客も総立ちで歌い、踊る|写真 © ブリンクホフ・メーゲンブルク
男性陣も負けてはいない。アーヴィド・ラーセンのハリーは少し不器用で憎めず、ビル役のサイモン・ヴィクターも抜群のコメディーセンスを見せる。リチャード・テイラー・ウッズはサムを真面目な人物として演じ、男性の声域では音を出すのが難しい「SOS」と「ノウイング・ミー、ノウイング・ユー」を見事に歌い上げた。
歌、ダンス、演技の三拍子がそろった若いアンサンブルも素晴らしく、舞台に活気と楽しさを添えている。
圧巻のフィナーレでは、観客が立ち上がって歌い、踊った。いつ観ても気持ちが明るくなるこの作品に、これ以上ふさわしい締めくくりがあるだろうか。
心から楽しんで、笑って、胸を打たれて、ABBAならではのサウンドに懐かしさを覚える夜。『マンマ・ミーア!』は、まさに「スーパー・トゥルーパー」だ!
私は、わが家の「マンマ」を連れて観に行った。母はすっかり気に入ってくれた。信じてほしい。これ以上のお墨付きはない!
チケットはグランド・シアター公式サイトまたは電話(01902 429212)で。
※ウルヴァーハンプトン・グランド・シアター
ウルヴァーハンプトン・グランド・シアターは、イングランド中部のウルヴァーハンプトン市中心部にある、1894年開館の劇場です。英国の劇場建築家チャールズ・J・フィップスが手がけ、正面の外観は大規模な改修を経た今も、開館当時の姿をほぼとどめています。 Wolverhampton Grand Theatre
ヴィクトリア朝の面影を残す客席
館内は約1,200席。写真では、舞台を囲むように重なるバルコニー席が目を引きます。現在は、ロンドンのウエストエンドから巡回するミュージカルをはじめ、演劇、バレエ、オペラ、英国のクリスマス時期に親しまれるパントマイムなどが上演されています。 images.grandtheatre.co.uk
『マンマ・ミーア!』の英国ツアー会場
先ほどのアリソン・ノートンによる公演評は、この劇場での『マンマ・ミーア!』を取り上げたものです。寒い11月の夜、白壁の建物と深い青の海を描いた舞台美術が、観客を暖かなギリシャの島へと誘ったと評しています。今回のウルヴァーハンプトン公演は2026年11月7日(土)までです。 Wolverhampton Grand Theatre
所在地 Lichfield Street, Wolverhampton, WV1 1DE, England
劇場公式サイト・歴史紹介 | 『マンマ・ミーア!』公演ページ
https://www.expressandstar.com/news/mamma-mia-wolverhampton-theatre-abba-9329461








