―ミュージカル『CHESS』から独占曲クリップ公開
『CHESS』でアナトリー(ロシア人)を演じるニコラス・クリストファーによる楽曲「私の目指す場所(Where I Want to Be)」を初公開。
*Richard Phibbs
「誰もが問うのは、夢が先延ばしになったときにどうなるか、ということです。でも、夢が叶ったときには何が起きるのでしょう?」。
そう語るのは、『スウィーニー・トッド』や『ハミルトン』で知られるニコラス・クリストファー。彼は今秋、待望のブロードウェイ復活を果たすミュージカル『CHESS』でロシア人CHESS・グランドマスター、アナトリーを演じる。
このカルト的な人気を誇る作品は、ABBAのベニー・アンダーソンとビヨルン・ウルヴァースによる音楽、ティム・ライスによる歌詞で構成されている。今回のブロードウェイ再演では、『Empire 成功の代償』のダニー・ストロングによる新しい脚本が加わった。先週は、アーロン・トヴェイトがアメリカ人プレイヤー=フレディ・トランパーとして歌う「One Night in Bangkok」のクリップが公開されたばかり。クリストファーは、トヴェイト、リア・ミシェルと共演する。
今回公開されたのは、クリストファーが歌う「Where I Want to Be」。彼が演じるアナトリー・セルギエフスキー(ロシアの世界チャンピオン)を観客に初めて紹介する曲だ。
夢が叶った後に訪れる空虚
「アナトリーは、生まれてからずっと同じシステムの中で育ってきました。一つの目標に向かって一生懸命進んできたのに、その夢が実現した瞬間、彼は立ち止まり、『次に何が起きるんだ?こんなはずじゃなかった。こんな気持ちになるなんて思ってもいなかった』と感じるんです。むしろ彼は操られているように感じ、喪失感を抱きます。
なぜなら、作品が描く(そして想像する)ロシアの政治体制のもとでは、CHESSの試合に敗れたことで親友が姿を消してしまったからです」。
彼は続ける。「次の対局はまさに生死をかけたものになる。アナトリーが本当に葛藤しているのは、『そのどちらに意味があるのか?生きることも死ぬことも、どちらにも理由がないとしたら、自分は一体何をしているのか?』という問いです。その答えは物語を通して見出されていきます。彼はやがて、『愛こそが答えだ』と気づくのです」。
*Richard Phibbs
『CHESS』に出演するアーロン・トヴェイト、リア・ミシェル、そしてニコラス・クリストファー
幼少期からの『CHESS』との出会い
クリストファーが『CHESS』を初めて知ったのは、演劇サマーキャンプでのことだった。
「友人の一人が『Anthem(アンセム)』を歌っていて、『この曲は何?ミュージカルっぽいけど、クラシックでありながらロックみたいでもある』と衝撃を受けました」。
ファンなら、彼が最初に披露するのはアナトリーの代表曲「Anthem」だと予想したかもしれない。だがクリストファーはこう語る。
「『Anthem』は作品の心臓部のような曲なんです。だから観客が実際に劇場に足を運んでくれるまで、大切に胸にしまっておきたい」。
*Dimitrios Kambouris/Getty(トニー賞プロダクション提供)
ニコラス・クリストファー、2025年6月8日、ラジオシティ・ミュージックホールで開催された第78回トニー賞授賞式に出席。
思いがけないチャンス
「黒人と白人のハーフである僕が、ブロードウェイでロシア人を演じるチャンスが訪れるなんて夢にも思っていませんでした。」と彼は笑う。
転機は、『スウィーニー・トッド』で三種類の方言を操る演技を披露した時だった。演出家マイケル・メイヤーがその舞台を見て、改稿版『チェス』のリーディングに彼を呼んだのである。
ブロードウェイ再演が正式に決まると、クリストファーはロシア語訛りを徹底的に学び、ロシア文化とCHESSについても研究を始めた。
「ブライトン・ビーチに行って、ロシア人の友人たちと砂浜でCHESSを指していました。文化的な好奇心や脳のトレーニングとしても、とても新鮮な体験でした」。
*Dimitrios Kambouris/Getty
ミュージカル『CHESS』の主演者であるニコラス・クリストファー、リア・ミシェル、アーロン・トヴェイトが、2025年6月8日にニューヨーク市ラジオシティ・ミュージックホールで開催された第78回トニー賞授賞式に出席。
キャリアのすべてを注ぎ込む
「モータウン音楽から学んだフレージング、ハミルトンから得た言葉のリズム、スウィーニー・トッドで体得した壮大さ…。これまで培った全ての経験を、『CHESS』に注ぎ込めるんです。自分の声、音楽性、キャリアの集大成として、すべてをこの作品に注ぎ込むことができる」。
そして観客には、作品の根底に流れる普遍的な真実を受け取ってほしいと語る。
「ときに私たちは、自分の快適さを犠牲にしてでも大義を選ばなければならない。事実と真実は別物ですが、この作品は『真実』に根差しています。観客は必ず、舞台上の誰かに自分を重ねることができ、人間であることの意味について問い、想像力を羽ばたかせることができるでしょう」。
そして最後に笑いながら付け加える。
「CHESSのルールを知らなくても、『CHESS』という作品を楽しめますからね」。
*John Lamparski/Getty
ニコラス・クリストファー
公演情報
- プレビュー開始:2025年10月15日(インペリアル劇場)
- 正式開幕:2025年11月16日