2025年10月以前の私は、正直なところミュージカル『CHESS(チェス)』のことをまったく知らなかった。
ただ、出演者については知っていた。
アーロン・トヴェイトとニコラス・クリストファーは『スウィーニー・トッド』で観ていたし、ブライス・ピンクハムも『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』で知っていた。
正直に言えば、彼らこそが私が『CHESS』を観に行った最大の理由だった。作品について何も知らない状態で劇場へ足を運んだのである。
そこへさらにリア・ミシェルが加わった。
そして私も多くの観客と同じように、「冷戦ミュージカル」と銘打たれた作品にすぐ興味を引かれた。
好きか嫌いか、はっきり分かれる作品
インターネット上での『CHESS』に対する評価は、
「大好きか、大嫌いかのどちらか」
にきれいに分かれている。
私自身も、初めて観た時には物語が時々分かりにくいと感じた。
だが、それは脚本自体の問題であり、これまで何度も改訂されながらも完全には解決されていない欠点だと思う。
しかし、この作品を愛する人々が評価するのは音楽である。
その理由は非常に分かりやすい。
「ノーバディーズ・サイド」
や
「かわいそうな子(ピティ・ザ・チャイルド)」
といった楽曲は感情的で力強く、聴く者を圧倒する。
また、リプライズ(再演版の楽曲)やパート2の楽曲は、それ自体が物語を語る役割を果たしている。
ブライス・ピンクハムと『CHESS』の特別な縁
アービター役を演じたブライス・ピンクハムには、この作品との特別なつながりがある。
彼の義父は1980年代のロンドン・ウエストエンド初演版『CHESS』の出演者だった。
さらに2018年に John F. Kennedy Center for the Performing Arts で再演された際には、妻から
「ぜひアービター役をやるべきよ」
と勧められたという。
突然の終演とキャスティング発表
『CHESS』は初演時、ブロードウェイでは失敗作だった。
わずか2か月で幕を閉じてしまったのである。
今回の新演出版は、その失敗を繰り返さないことを目標としていた。
そしてしばらくの間は、その目標を達成したように見えた。
ところが主演のリア・ミシェルが、
2026年6月21日で降板する
ことを発表した。
さらに歌手のジョジョ(ジョアンナ・レヴェスク)が、
6月23日からフローレンス・ヴァッシー役を引き継ぐ
と3月に発表された。
ところが、
2026年5月26日――
突然、
「最終公演は6月21日」
と発表されたのである。
ジョジョ自身も、その日から稽古に入る予定だったと語っている。
私を含め、多くのファンはこの決定に怒りを覚えた。
私たちは作品を愛している観客たちを数多く見てきたし、実際に話もしてきたからだ。
なぜ突然閉幕したのか
公式発表によれば理由はチケット売上だった。
リア・ミシェルの降板発表後、売上が落ち込んだという。
しかし新しい主演であるジョジョにチャンスを与えることなく、
作品を閉幕させる
という決定が下された。
チケット売上の低下は即閉幕の理由ではない
もちろんブロードウェイ作品の制作には莫大な費用がかかる。
しかしそのリスクは最初から分かっているはずだ。
これは映画やテレビ業界でも同じである。
視聴率が下がれば番組は打ち切られる。
回復する機会を与えられない。
『CHESS』も同じ運命をたどった。
今のブロードウェイは高すぎる
現在、ブロードウェイを観劇する費用は過去最高レベルに高騰している。
空席が目立つ理由の一つも、その高額なチケット代にある。
ジョジョのような新しいスターには、
少なくとも一度は舞台に立つ機会が与えられるべきだった。
そしてその後に閉幕を判断しても遅くはなかったはずだ。
芸術は数字だけでは測れない
残念ながら、これが今のブロードウェイの現実である。
芸術、とりわけ舞台芸術は非常に不安定なビジネスだ。
それを理解しない人々によって運営され続ける限り、
「常に利益を出さなければならない」
という考え方が優先されてしまう。
その結果、一定の数字に達しなかった作品は、これからも同じような運命をたどるだろう。
最後のマチネ公演で感じたこと
私は幸運にも、
日曜日の千秋楽マチネ公演で『CHESS』を3度目に観ることができた。
劇場は満席だった。
拍手は大きく、スタンディングオベーションは長く続いた。
もちろん千秋楽だから観客が集まるのは当然かもしれない。
しかし、
『CHESS』の劇場にあった空気は特別だった。
この作品を愛した観客は多かった
私はミュージカルを観て、
すぐにここまで夢中になることは滅多にない。
だが『CHESS』は違った。
そして、そう感じたのは私だけではない。
劇場で話した多くの観客も同じ思いだった。
だから私は願わずにはいられない。
この作品には少なくとも1,000回公演を達成してほしかった。
https://www.themarysue.com/chess-the-musical-deserved-to-continue-its-run/



