クリス・コーネル(※)が手がける音楽は、常に単なるロックンロールの枠を超えた意味を持っていなければならなかった。
彼はロック・フロントマンの理想像そのものだったが、周囲が彼を“次のロバート・プラント”と期待する中で、やがて彼自身はサウンドガーデンとともに従来のロックの枠を超えようとするようになった。
しかしグランジ・ムーブメントが爆発的に広がると、シアトル発の本物のバンドと、その流行に便乗するバンドとの間には明確な違いが生まれた。
グランジと“便乗組”
コーネルにとって、その違いを見抜くのは難しくなかった。
もちろん、1990年代の優れたオルタナティヴ・アクトがすべてシアトル出身である必要はなかった。
ビリー・コーガンのように独自のファン層を築いた例もある。
しかし一方で、パール・ジャムに似すぎていると感じられたストーン・テンプル・パイロッツのようなバンドに対して、シアトルのミュージシャンたちが冷ややかな視線を向けていたのも事実である。
ポスト・グランジへの違和感
もしコーネルがスコット・ウェイランドのような“グランジに影響を受けたハードロック”に違和感を覚えていたとすれば、その後に訪れたポスト・グランジの波はさらに受け入れがたいものだった。
デイズ・オブ・ザ・ニューのように新しいアプローチを試みるバンドもあったが、やがて“次のグランジの大物”とフーティー・アンド・ザ・ブロウフィッシュの区別がつかなくなるほど混沌とした状況になり、何かが完全におかしくなっていった。
1970年代ポップとの比較
とはいえ、コーネルにとってこれは全く新しい現象ではなかった。
彼は音楽を始めた頃、1970年代の大物ポップアーティストたちのやり方をすでに見ていた。
そしてシアトル・シーンに便乗する“後発組”を批判する中で、いわゆる“バブルガム的なオルタナティヴ”の象徴として、ABBAも引き合いに出されることになった。
コーネルの発言
コーネルはこう語っている。
「問題なのは、業界がそれを後押ししていることだ。本来なら独自の視点や創造性を奨励すべきなのに。業界にはその力がある。ABBAのような、利益を生む“作られたポップ”はこれからも存在し続けるだろう。だったら、その利益の一部を使って、独自の才能を持つ人たちを支援すればいいじゃないか。単に売れるからという理由で誰かの真似をさせて、一時的に成功させ、その後のキャリアを台無しにするよりもね」。
ABBAへの再評価
しかし正直なところ、このような批判の対象としてABBAを挙げるのは適切とは言い難い。
確かに彼らは“理想的なポップ音楽”の象徴ではあるが、何かに便乗して成功したわけではない。
多くのバンドより恵まれた環境にあったのは事実だが、グランジ風を真似しただけのバンドと比べれば、ABBAのメンバーはまさに音楽的天才だった。
シアトル勢のABBA観
また、シアトルのミュージシャンたちがABBAを軽視していたわけでもない。
カート・コバーンは観客を混乱させることを好んでいたが、ニルヴァーナのフェス出演時にABBAトリビュートバンドを前座に起用したというエピソードは、見方によっては非常にユーモラスであり、同時に敬意の表れでもある。
結論
コーネルにとってABBAは単なる“軽いポップ”に見えたかもしれない。
しかし彼らは単にヒット曲を作ることだけを目的にしていたわけではない。
彼らは商業音楽の頂点を目指した“音の魔術師”だった。
そして、コーネルが批判した“模倣的なバンド”がどれほど存在しても、
「テイク・ア・チャンス」のような強烈なフックを生み出せたバンドは、おそらくほとんど存在しなかっただろう。
※クリス・コーネルとは
クリス・コーネルは、アメリカを代表するロックミュージシャンで、
グランジ・シーンを牽引した伝説的ボーカリストの一人です。
■ 基本情報
- 本名:クリストファー・ジョン・ボイル
- 生年月日:1964年7月20日
- 出身:アメリカ・シアトル
- 活動:シンガー、ソングライター、ギタリスト
■ 主な活動
① サウンドガーデン
コーネルはサウンドガーデンのフロントマンとして名を馳せました。
このバンドは、グランジ(シアトル発のロックムーブメント)の中心的存在です。
代表曲:
- 「ブラック・ホール・サン」
- 「スプーンマン」
② オーディオスレイヴ
その後、彼はオーディオスレイヴを結成。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーと組んだスーパーグループとして成功しました。
代表曲:
- 「ライク・ア・ストーン」
- 「コーチーズ」
③ ソロ活動
ソロとしても活動し、映画『007 カジノ・ロワイヤル』の主題歌
「ユー・ノウ・マイ・ネーム」も手がけています。
■ 特徴
圧倒的な歌唱力
- 4オクターブ近い声域
- 力強さと繊細さを兼ね備えた表現
ロック史上屈指のボーカリストと評価されています。
深い歌詞世界
彼の楽曲は、
- 孤独
- 内面の葛藤
- 社会への違和感
といったテーマを扱うことが多く、重厚で哲学的な内容が特徴です。
■ ABBAとの関係(文脈)
記事にもあったように、コーネルは
👉「商業的に作られたポップ音楽」
に対して批判的な立場を取ることがあり、その文脈でABBAが引き合いに出されました。
ただしこれはABBAそのものを否定するというより、
音楽業界のあり方への批評に近いものです。
■ 影響と評価
- グランジ四天王の一人(ニルヴァーナ、パール・ジャムなどと並ぶ)
- ロック史に残るボーカリスト
- 多くのミュージシャンに影響を与えた存在
■ イメージ
日本で例えると、
👉「圧倒的歌唱力と表現力で時代を象徴したカリスマロックボーカリスト」
という存在です。
https://faroutmagazine.co.uk/band-chris-cornell-dismissed-as-manufactured-pop/



